嗚呼美しきこの世界
【ダイナシノショウセツ改め】
「ここは・・・まさにファンタジーだ・・・」
『奇跡の冒険家、クレイル・ジョンスの手記』より
第一章:第三頁
この場所について早数日・・・少し見て回っただけで沢山の発見があった
このあたりだけがが特殊なのか、世界が特殊なのかはまだわからないが・・・
恐らくは後者だろう。
空飛ぶ巨大な甲虫に、角の生えた人間、得体の知れない家畜・・・だろうか。今までにこのようなものは見たことが無い。少なくとも、私は
「・・・世界に取り残された気分だ」
新たな技術を次々に生んでいったジョンス氏。彼の手記には、どの世界でも当てはまらない記号や、聞いたこともないような単語が次々と出てきており、学者達の間では「これらがまた新しい発明の基となる「技術の預言書」なのだ」など言われ、日夜解読が進められている。
下に下りると、盛大な笑い声と、怒声が入り混じり響き渡っていた
「あっはっはっは!」「ふざけんなよ!何だと思「おーい!ビールはやくー!」「そんでさぁ!そこで俺がよー!」「うおっ!あっぶねえ!」「こっちだよーだ「まてやおらぁ!」
うちのギルドは、こんな真昼間でもとにかく騒がしい
朝夜関係なく怒号と笑い声が溢れかえり、一部の真面目な奴と、活動期限(一月に15万$は稼がねーとギルドメンバー表から外されんだぞまったく!)ぎりぎりの奴等がボード*1の周りでたむろう
それと日常的にどっかで魔法の練習に失敗した奴が暴発したり、人が飲みすぎだとかでぶっ倒れて医者を呼ぶことになるんだ。ヒーラーはいるけど、いつも酔ってるから使い物にならないしな
ここは間違いなく、この大陸内で一番騒がしいギルドだろうよ
なんて考えていた時、後ろからかなり酔った声が聞こえる
「おぉーうシギ!おいちっとこっちこいや!」
ザガンのおっさんだ。
このギルドで異常とされる部類の人間で、自分のことを吸血鬼であると豪語してる割に酒をがぶがぶ飲んでる変人だ
いっつも酒を飲んではウェイトレスをやってるチェンさん(チェン・シュさん。外国の名前で覚えにくいんだよなぁ)にセクハラをくりかえして
「ふわァっ!?///もっ・・・ザガンさん!!」
あー
「はっはっは!今日も良いケツしてんなっ!」
これ。これをいっつもやってんだよ。いつか訴えられるんじゃねーかな。警部隊が入ってくるのも時間の問題だろ
「で、なんだよザガンさん」
何事も無かったよーに話を進めてく。ここでいまのことを話すと本題は絶・対・に、聞けなくなるからな
「んー?あぁ、ボスが呼んでたぞ!はよ行ってやれよぉ?あの人怒らせっと怖えぞっ?」
「・・・」
「・・・今から行くとこだよ」
「んぉ?そーかそーか!ならいーんだけどなっ!どうだ!話終わったら飲むか?デルゥも呼んで!」
「結構っす、ザガンさん」
なーんか抜けてんだよなぁ、このおっさん。あとデルゥは未成年だろ全く 噂ではかなりのやり手だった…らしいんだが、何しろこの人自身が吹聴してる話も混ざってるらしく信憑性はないんだよな
強い人ってのはツナミさんみたいな人のことなんだよな。どんな難解な依頼も一発で解決!どんな凶悪なモンスターでも軽々狩っちゃって連戦連勝の負け知らず。
噂を聞いて大陸の端から挑戦者がやってくるぐらいに強いんだよ!もちろん、それもぜんぶ倒してきてるしなー
魔法の方は全然らしいけど、剣の腕前は前のギルドマスターに並ぶほどの腕前!!次期ギルドマスター最有力候補だったんだけど…
今のギルドマスターは好きじゃない いくらヴァンさんの…あ、前のギルドマスターの推薦でも、さ…
バーカウンターを横目に、奥へ進んで階段を上り、三つ目の部屋
そのドアを開けると同時に、不機嫌そうな声が聞こえてきた
「シギ、 おっそい」
扉の向こうは、さっきまでの雰囲気が別世界だったかのように静かで、荘厳で、整った部屋(後でわかったんだけど、防音の永続魔法がかけてあるらしい)と、女性が一人
まるでファンナのように燃えているかのような緋色の髪と同じ色の両の瞳を持ち、
前代のマスターから引き継いだコートを羽織って、
その部屋の中心に佇むこの人こそ
我等がギルド『ヴァナフェニクス』
その、ギルドマスターだ。
つづく
*1:依頼掲示板。町などから各ギルドに回される依頼を張り出しておく所。金額と連絡先さえ書いてあればどんなものでも張られるため、変なものや怪しいものも大量にある