鈍色の楽園のつづき
明るく幸せな日常。色とりどりの生活。美しき感情の波
今日、世界は美しい色で染まっております
風は季節を運び、風景を、空気を、美しく彩り
土地は木々を育み、草花を育て、緑に青く、世界を染める
幸せのあふれる島。日の本に在りて、輝きを失わぬ楽園
ここは楽園。幸せのとなり、自由の島。
ここは楽園。鈍色に嫌われた、陰の土地。
ここは楽園。嫌われ者の、最後の地。
21xx年。超能力ブームが幕を閉じてはや数年。
超能力を持つ者たちは皆一様に一般人の目の届く場所から消えていた。
ある者は同行し、ある者は連行され、ある者は保護され、あるものは捕縛され、あるものは逮捕され、あるモノは無理やりに、あるモノは、楽園を見ることなく消えていった。
皆は当然困惑した。
芸能人が隣人が友人が
親が子供が赤ん坊が
有無を言わさず連れていかれ、隔離区域には立ち入ることも許されず。
遠目に見える、室内に映るわが子を友人を、鉄柵越しに確認することしかできなかった。
隠れ隠し通そうとする者が一様に見つかりだし
見守り続けた者たちが狂気に身を投げ出し
他者を知り、新たに生まれだし
答えを知りえた者が、白昼堂々爆ぜたころに。
楽園は、鈍色の塊を、産み落とす。
世界は色を変えていく、鈍色に、染まっていく
気づいた時には、間に合う所にはおらず
彩色の国は、一色にその身を堕とす
じわりじわりと平和は崩れ
既存の力は無に帰り
何もかもが
鈍に
彩色は消え
均衡は破れ、壊れ
裏切りと報復に包まれ
ひび割れが目に見えたときに
人々は抗うすべを一切持っておらず
ただひたすらに祈り、誰かに救いを求め
世界の意思と共に、救世主に鈍の矛を向け出し
鈍色に、染まる。